【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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夜風が気持ち良い。

朱雀たちがババ抜きで騒ぐ声も耳に心地良い。

露李は早々に勝ち抜けてしまったので、縁側に座り込んだ。
夕食は朱雀たちの推測した料理ではなく、肉じゃがだった。
それでも三人は喜んでいたし、実際美味しかったのだが。

襖の向こうは自分の世界じゃない、そんな不思議な考えが浮かんでくる。

───いや、あながち不思議でもないか。

露李の口の端が少し上がった。

巫女の里の暮らしとは大違いであるため、そんな気がするのかもしれない。

露李にとって幼馴染みや同級生、そして親戚は敵だった。

露李がそうしたかった訳はなく、露李の神影家の本家という家柄とその家柄に反して覚醒しない力が彼女の敵を知らぬ間に造り上げていたのだ。


幼馴染みがこんなに温かいものなんて知らなかった。

クラスメイトと話せる日が来るなんて思いもしなかった。

私は今、すごく贅沢だ。




──ジャリ。


すぐ近くで、地面を踏む音が聞こえた。

咄嗟に身構える。


「誰!」


強気に呼び掛けるが内心は怯えている。

大丈夫。私の身に何かあるのだとしたら、疾風たちが気づいてるはず。

暗闇から着物を着た人影。


「露李、私に向かってそのような口の聞き方。慎みなさい」


未琴だ。


「お母様…」


安堵する露李に未琴は眉をつり上げた。


「やめてちょうだい。私は貴女の母ではありません」


「─はい…」


「覚醒はまだのようね」


「はい」


「恥を知りなさい」


「申し訳ありません」


露李の目に、また底の知れない闇が宿った。


「風花姫として情けない」


「存じております」


「やはり、貴女に母親の記憶を与えるべきではありませんでした」


ぴくりと露李が顔を上げる。


「え…?」


未琴の表情は険しいままだ。


「風花姫として豊かに育つために、今まで週に一度、母親との楽しい思い出を与えてきたけれど。何の役にも立ちませんでしたね」



 
訳が分からない。