何が何だか分からないが、自分のことを想ってくれているのか。
露李はくすりと笑った。
「ジャンケンなら仕方ないですねぇ」
文月は面白くなさそうに頬杖をつく。
「いけるかなぁと思ったのに」
「いけねぇよ」
すかさず理津が突っ込み、疾風がまた仏頂面になる。
ジャンケンを言い出したのは理津だからな、と呟いて露李を促す。
「じゃあ疾風と理津の間に座るね」
「え、俺は!?」
「水無月さんはこっちです。役割分担は決めたはずでしょう」
有無を言わせぬ静の口調に、水無月がガックリと肩を落とした。
「ウソだー……」
「氷紀、そんなにずっと傍に居てくれなくても皆もいるんだし大丈夫だよ?」
純粋な露李の説得。
ごねようとしていた水無月の口がそのままの形で固まる。
「……そうだね、分かった。でもまぁ、安全性の問題じゃないんだけどな」
「氷紀のこと信用してない訳じゃないよ?すっごく信頼してる」
さらなる追撃に、思わず苦笑い。
兄貴分からの脱出出来る日はまだまだ遠いようだった。
「うーん…それは、うん。光栄というか悔しいというか…」
分かったよ、と渋々静の隣に腰を下ろす。
不承不承ではあるが静の隣は露李の正面だったので満足げに顔を綻ばせた。
全員が落ち着いて座ったところで、襖が開く。
「皆さん、朝食の準備が出来ました」
海松の控えめな声とともに美味しそうな香りが漂ってきた。
そして、海松の二人の式と美喜も盆を手にして入ってくる。
「あ、私」
手伝うよ、といつものように腰を上げかけたが、美喜の鋭い視線が露李を制した。
「露李は座ってなさい、あんたの快気祝い最初のご飯なんだから。守護者様たちは良いわ、すぐ喧嘩して暴れそうだし。どうせなら水無月あたり手伝いなさいよ」
「では露李の分はこの俺が運んでやろう」
他の人のもよっ、と言われながら水無月が立ち上がり配膳を始める。
それぞれの前に湯気をたてる朝食が運ばれたところで、露李はクルクルと辺りを見回した。
「ねぇ、美喜…」
「秋雨たちのでしょ?露李は絶対そう言うと思って用意してあるわよ。冷めるからここに持ってきてないだけよ」
さすがに美喜はよく分かっている。
露李がほっとして笑うと、ちょんちょんと海松がつついてきた。
「私だって、露李様はそう言うと思っていましたよっ」
思わぬヤキモチにまた笑みがこぼれる。
「うん。分かってるよ、ありがとう」
「あんた皆でご飯食べるの好きよねー」
「露李様はお優しいですから」
和やかな雰囲気。
満ち足りた気分だった。


