しばらくしていると、廊下を歩く足音が聞こえてきた。

あいにく今は力を解放する体力も無く、誰か確認する余裕もない。


「露李起きてるかー?俺様が来てやったぞー」


外から呼ばれ、どうぞと応じる。

遠慮がちに襖が開かれ、結が顔を覗かせた。


「おはようございます。結先輩」


「ん、はよ。怪我はどうだー?」


水と薬が乗ったお盆を傍らに起き、畳の上に座りながら露李に訊ねる。


「朱音さんが関わった怪我がなかなか治らなくて。皆はどうしてますか?」


「今か今かとお前を待ってる。今日から出てこれんだろ?秋雨に医学の心得があって良かったなー」


「あの人ほんとに何者なんでしょうね」


「何千年も生きてりゃ資格の二桁くらい持てそうなもんだけどなー。俺達は怪我の原因とか治り方とかが普通じゃねーから病院も無理だしな」


うんうん、と頷いて結は手元に置いた薬を取り上げた。


「ほい、これがその秋雨特製の薬。大抵の傷は海松の術でどうにかなるけど、お前のこればっかりは駄目みたいだなー」


苦笑いしながら結は薄い紙に入ったそれを露李に手渡そうとし、困った顔をする。


「その腕じゃ難しいよな」


「え?ああ……」


左腕を上げることが困難な露李、動かすのも痛んで顔をしかめてしまう。


「仕方ねーな、飲ませてやるから口開け」


結は何でもなさそうに言うが、露李は顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせる。


「何だよ。早くしねーとあいつらがうるせーだろ」


「や、そういう問題じゃっ」


飲ませてもらうという行為に恥ずかしさがこみあげる。