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 皆で集まり、それまでにあったことや露李が意識の中で見聞きしたことを話した。

結から事の顛末を聞いた露李は、青ざめて沈黙する。


「つーことだ」


「そう……ですか、私が」


水無月が言い渋っていたのはこれかと理解した。

自分の兄代わりは優しいということを知っていたので聞き返すようなこともなく、納得した。


「兄様、ごめんなさい」


泣くな、と自分を心の中で叱咤する。

目頭が熱くなるが、今泣けば水無月は罪悪感を覚えるだろう。

これから先もずっと、自分に気を遣って話せないことが増えるだろう。

そんなことは嫌だった。

自分のために誰かが苦しむようなことは、絶対に露李は嫌だった。


「露李は悪くないよ。子供の露李は自制を知らなかった。感情が昂れば俺達の種族は力を発動させやすいんだ、仕方ないことだよ」


水無月は微笑んで露李の頭に手をのせた。


「取るに足らないことだよ。それにその力は、朱音様が授けたものなんでしょうが」


そう言われ、露李は守護者たちを見回した。

真剣な表情で見返され、決意を固めて一人一人を見つめる。


「ちゃんと……言えてなかったと思うけど。私は、皆が見た力で一族を殺してしまったらしいんです」


「殺すってのはどういうことだ?」


「結先輩、それなんですけど。兄様のを見ていたから分かると思うんですが、私は妖力だけじゃなくて生気まで吸ってしまうらしくて」


「ああ、そうなんだね。だから気を失ってたのか」


「だが、その力でどうして滅ぼすことが出来るんだ。ただ荒廃させてしまったら何者も生きられないぞ」


疾風に尋ねられ、露李は膝の上で拳をつくる。


「私の力は…全て記憶から何からをゼロに戻してしまえるの。そういうことだと思う」


「それじゃあ、水無月さんの記憶でどこか欠如したりは?」


「…分からない。だが、全てを無に出来るなら失ったことには気がつかないものなのではないかと思っている」


なるほど、と静が頷いて、そこが静寂に包まれた。


「で、ソイツと戦わなきゃいけねぇのな」


「ああ、そうだ。全力で守る。理由はどうであれ露李は傷つけられた」


食い気味に水無月が理津に答えると、皆くすりと笑った。

しかし、露李は笑えなかった。

座ったまま俯いていると、すっと陰がさした。