てきぱきとされた指示で守護者たちが全て必要なものを用意する手筈となった。
露李は見慣れない着物と洋服が、小さく開けられたその隙間から差し入れられるのを見て、不思議顔を海松に向けた。
「私こんな服と着物、持ってたっけ?」
「いえ。露李様はご多忙ですので、私が新しいものをご用意させて頂きました。水無月さんのものもございます」
「海松ちゃんってセンス良いよねいつも」
「ありがとうございます。お洋服とお着物、どちらをお召しになりますか?」
「慣れてるのは着物だからそっちにしようかな」
「分かりました」
そう答え、露李の着替えを手伝いながら海松は、衝立を持ってきたその後ろで着替えている水無月に趣味やサイズの良し悪しを問う。
「…なかなか良いではないか。布の質感、大きさ、どれも満足と言えるだろう」
仰々しい言い方に露李がプッと吹き出す。
「兄様、素直じゃないですよ」
「怒られちゃったなー」
「はい、怒っちゃいます。でも氷紀兄様、いつもの死神退治みたいな格好から脱出できて良かったねっ」
「死神……!?」
戦闘に特化した服装をと有明に仕えていた頃から仕立てているものだった。
趣味が悪いとは何度も言われたがまさか露李にまで言われてしまうとは。
水無月はしょぼんと項垂れる。
委員長騒ぎのときに守護者たちが洋服を無理矢理に着せてきたのはこういうことか、と悲しくなった。
「氷紀兄様の着物姿は久しぶりだから嬉しい。あの頃に戻ったみたい」
露李はその言葉の中に深い意味はなかったのだが、水無月は少し黙りこむ。
「兄様?」
「もう、あの頃とは全然違うけれど」
思いの外沈んでいる水無月の声に露李は衝立を窺うように見た。
「でも、私はどんな氷紀兄様でも好きよ」
──私を、救ってくれた人だから。
優しさをくれた人だから。
「ありがと」
水無月の声が震えているような気がした。


