【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 ふうふうと熱っぽい顔を真っ赤にして苦しむ少女と、顔面蒼白で眠っている男。

対照的な二人が寝る部屋を、守護者たちは後退で見張り世話をしていた。

着替えの問題もあり別室でも良かったのだが、目が覚めたときのことを考えるとそうするわけにもいかなかった。

そこで海松か守護者の誰かが退出するという形で面倒を見ている。


熱を出してずっと魘されている露李は皆で代わる代わる看病し、水無月は海松が癒しの術を施した。

そのおかげか、水無月の顔色は最初よりずいぶん良くなっていた。

二人とも丸一日は眠っているだろう。


「文月ー、新しい手拭い持ってきたぞー」


「ありがと」


よく晴れた昼下がり、文月と結が担当している時間だった。

水無月は顔色もよく普通に眠っているように見えるが、露李はまだ苦しそうなままだ。

文月は林檎のようなほっぺたにそっと指を滑らせた。


「露李ちゃん、早く目を覚まして…」


早く君の笑顔が見たい。


「ほらよ」


「ん」


渡された手拭いを受け取り、少し意識を集中させる。

途端に手拭いが冷たく濡れる。

それで露李の汗を拭ってからその小さな額にのせる。

少し呻き声がおさまった。

しかしまだ苦しそうだ。


「あつい……あついよ……」


「露李、大丈夫だぞー。楽にしてやるからなー……」


ふわりと翡翠の風が露李の髪を揺らした。

文月は憂いを帯びた結の目をじっと見てから、視線を少女に戻した。


「ねえ、結。罪悪感とか本当いらないから」


お前は悪くない、と断言した。


「─ん、サンキュ。けど、やっぱりキツいなー。あそこまで怖がられたら目が覚めたとき拒絶されるんじゃねーか?」


いつもの笑顔のように見える顔を作り、ははっと笑った。


「目の前で水無月が気を失うところを見るより、ずっと良い。だから水無月は頼んだんだよ」


「分かってるっつーの…俺が嫌なんだよ」


あんなに苦しんで、泣いて、怖がって。


「分かってることも分かってる。あんなこと……誰だってやりたくないよ。でも、水無月は傍にいたからお前を選んだんじゃない。結だから、選んだんだ」


「何だよ文月らしくねーこと言ってよ」


「真面目に。お前には守護者の誰も勝てないよ」


「気っ持ちわりー」


そう言ってみたものの、結はぐっと下を向いた。

何だか涙が出そうだった。