そんな調子で校門を出てすぐ、後ろから足音が聞こえた。
「露李先輩!遅くなってすみません!」
知恩だ。
「露李だけか、お前は」
朱雀が知恩の頭に拳を落とす。
「痛っ!露李先輩に待たされたことはありませんけど疾風先輩にはいつも三時間以上待たされてるんですからね僕!」
涙目になって知恩が反論した。相当痛かったらしい。
「おい疾風、中三のチビにてめぇのソレはねぇだろ」
水鳥が珍しく常識に則ったことを言った。
珍しい。
いつもはちょっと恥ずかしいことしか言わないのに。
露李がチラリと水鳥を窺う。
バレないようにしたつもりだったが、
「…何だよ」
気づかれてしまった。
「意外と、常識人なんだね」
「ああ?」
怪訝そうに露李を見て、またニヤリと笑う。
「俺は男には興味ねぇからな」
そこなんだ、と思ったことは秘密だ。
「さっきから俺に常識が無いみたいなこと言ってないか」
朱雀が頬をひくひくさせながら間に入ってくる。
「常識がてめぇの脳内にあったことが初耳だな」
「理津に一番言われたくない台詞だ」
殺気が二人から漂い始め、知恩は苦笑いで露李を源から避けた。
「あの二人の殺気は当たるとまずいですからね」
「そうなの?」
「普通の人間ならまだしも、特殊能力のある人ですから。戦闘モードのスイッチが入ってます、今」
露李が無意識に目を細めて二人を見ているのを見て、また知恩も嬉しそうにする。
笑ってこそいないが、露李の表情は昨日よりも幾らか柔らかくなっている。


