妖力だけでなく、生気も吸われているようだった。
純白の雪の上に鮮やかな赤が散った。
「ちからがほしい……みんなを、わたしを、しあわせにする、ちから……」
露李の声が響く。
か細い声を、気に乗せて運んでいた。
「ひとりに、しないで……いいこにするから……あなたもおなじ……わたしと、おともだちに……なって……」
悲しい悲しい言葉を、音楽のように。
さながら、歌うように口ずさんで彼女は歩く。
──同族殺し
有明の言葉が、ふと水無月の脳裏によぎった。
「けど……露李が神影家に引き取られたのは、一族が死に絶えた後の……はず」
視界が霞んでいく。
「しっかりしろ水無月!!っ、露李!!やめろ!!」
「俺は、いい……から、あの子を……」
きっと、目が覚めたら悲しむ。
早く止めないと。
「結!全然近づけないよ!!どうする!?」
文月が浅葱色をまとい、蔓を発生させて露李を捕らえようとするも弾かれてしまう。
結界のようなものが張られているようだ。
「くそ、疾風!!俺と静が後押しする、てめぇはあの結界を壊せ!!」
「了解」
「行くぞ静!」
「はい!」
理津が露李の前に紫の幻影を出現させる。
「今は何をしてる!?」
「“停止の幻”を使った!!行け!!」
「硬化!!筋力増強!!」
静の萌黄を纏い、疾風が走り出す。
結がその後ろ姿に手を翳した。
翡翠の風が疾風を押す。
疾風が結界を壊そうと拳を振りかざし、当てる。
「目を覚ますんだ露李!!」
「じゃま……しないで」
届かない、どうして。
また疾風が弾き飛ばされる。
その時だった。
「───露李様」


