「理津がまともだ」
「うるっせぇな!!んな子供相手に色々かませるかよ!!」
「わー怖ーい。水無月ぃ、こんなやつ傍に置いといて大丈夫?」
「何でそこで水無月に振るんだよ殺す気か!」
結と文月のからかい声に噛みつく理津。
「お前まで感情的になってどうする」
「………………うるせぇよ」
疾風に言われてしまったことを認めるのに時間を要したのか、随分な間が空く。
「ほう、貴様いつもの露李高校生バージョンなら何かしていたのか?」
また悪人の形相になった水無月に皆が戦慄する。
やばい、と理津が悟ったと同時に露李が理津の頬を引っ張った。
「いてっ。な、何だよ」
「ダメだよ、にいさまは見境ないんだから」
思わず疾風がぶっと吹き出す。
こんな子供に言われてしまってはどうしようもない。
「つ、露李……なかなかに来るよそれは」
「だって、お名前をわるいユウレイに呼ばれたとき、おこって殺しちゃったでしょう?」
「くっ。覚えてたの?」
こくりと露李が頷いて応えると、水無月は顔を覆う。
「大人げない……」
「いやお前もとから大人げなんて持ち合わせてねーだろ」
間髪入れずに結に突っ込まれる。
「悪霊なんていたんだ?巫女の里なのに?」
水無月を無視して文月が問い、静も怪訝な顔をした。
「そうですよね、風花姫様の生家の辺りは聖域だって聞いていましたよね。露李先輩のお話じゃそうでもないみたいでしたが」
「おばあさまとか、かあさまとかがお祓いはするんです。でも、どうしても中から生まれちゃうって言ってました」
はきはきとされた返事に納得し、文月もふうんと相槌を打った。
「しゅごしゃさまは、聞こえないんですか?」
また目を閉じて露李が尋ねた。
「聞こえない。……が、邪気は分かるぞ?」
「ちがうの。ないてるの……」
疾風に首を振ってみせ、露李は悲しそうな表情を浮かべた。
「わたしが、かなしいのをとってあげれたらいいのに……」
そう言った瞬間。
「ダメだ露李っ!」
水無月が叫んだ。


