「はああ、露李!ごめんね怖かった?」
態度を一変させて水無月が近寄ると、露李はふにゃりと笑みを浮かべた。
「ううん……とってもきれい」
「本当に露李ちゃんと水無月ってお互いに甘々だよね」
文月が息を切らせて木の幹にもたれかかる。
結もその枝の上に腰かけ、静は地面に座り込んでしまっていた。
「一体何があったんだ、静。お前もいたんだろう」
呆れた声の疾風に静はまた泣きそうな顔をする。
「無理ですよ僕にあんなの!結先輩が面白いからって文月先輩は何だかんだとからかうし、そうしたら水無月さんに見つかるし挙げ句の果てに、結先輩が間違って風を起こして木に積もってた雪を水無月さんと文月先輩に浴びせちゃったんです!」
いつも温厚で穏やかな静が早口でまくしたて、思わず理津と疾風も意表を突かれて口を閉ざす。
「それは災難だったな…」
「巻き込まれただけじゃねぇか。可哀想すぎるわ」
二人に同情されて本当ですよと頷く静。
「つーか。てめぇらは加減できねえのか?あ?」
「えーなんで俺まで怒られてるの?」
「当たり前っすよ。露李がすげぇ怯えてましたからね」
理津に頭を撫でられ、また嬉しそうに露李が頷く。
「こわかったです。……でも、楽しそう」
「おー!お前もやるか露李?」
「かくれんぼの本質を見失ってます」
「堅いこと言うなって疾風!な!」
「あれ…これは俺がおかしいのか?」
生真面目な疾風が思案顔になり、この場で唯一の常識人である理津が大きなため息をついた。
「みんなから、とってもいい気がでてます」
ぽつりと呟いたあと、露李は少し首を傾げた。
「どうしたんだ。露李」
「ないてる人がいる。はやて、ないてる人がいるの」
「泣いてる人?どんなだ?」
唐突な言葉に疾風も一緒に首を傾げる。
「黒いの。すごく黒くて……こわい。でも、すごくかなしい」
まだ邪気というものが分かっていないのだろう彼女は胸に手をあてて考え込む。
「あっちです」
彼女が指差した方向は。
「花霞───!」
それが仕舞ってある蔵だった。


