「美喜、それはないと思う…」
そう?と呟いて美喜は手を振りながら教室を出ていった。
「そろそろ行くぞ」
朱雀が露李に呼び掛けた。
「はい」
三人で廊下を歩く。
「なーんで俺まで迎えに来なきゃいけねぇんだよ…今朝のことは悪いと思ってっけど」
水鳥が洩らした。
「仕方ないだろ護衛なんだから。つーか理津はほとんど授業受けてないだろ」
「うるせぇぞ疾風」
露李は首を傾げた。
そんなことをどうして知っているのだろう。
「あれ。知らなかったのか露李」
「何を?」
「理津も同じクラスなんだぞ」
「え」
もちろん露李は教室内で水鳥の姿を見かけたことなどない。
「どうでも良いんだよそんなことは。結と文月先輩と静はどうした?」
かなり無理のある話の変え方だが、朱雀は少し思案するような顔をした。
「結先輩と文月先輩は神社の結界の見回り。静はもうそろそろ来るはずだけどな」
見回りか。大変だな、申し訳ない。
露李が少し表情を暗くしたのに二人は鋭く気がついた。
「気にするな。いちいちそんな顔しなくて良い」
「あぁそうだ。お姫様はお姫様らしく守られてりゃ良いんだよ」
二人とも、今朝のような笑顔が見たいというのが本音だった。
「ありがとう」
「いちいち礼も言わなくて良い」
「そんな顔してっと本当にどうにかしてやりたくなるからやめとけ」
「黙れ十八禁」
露李が表情を緩めたのを見て、二人は小さく笑った。


