「どうか、なさったんですか?」
守護者たちが露李を連れて隠れてしまったので、海松と水無月が彼等を探すことになった。
真っ白な雪の中を歩きながら、厚着をさせたものの露李は寒くないのだろうかと気にかかる。
ぶるりと身を震わせながら、海松が辺りを見渡すのは止めずに尋ねた。
先程から、水無月はどことなく物思いに耽っているような気がしたのだ。
「どう、とは」
思いの外沈んだ声に戸惑う。
いつも自信満々な彼がどうしたというのだろうか。
「何だか、お気持ちが沈んでいらっしゃるような気が致しましたので」
「…貴様に悟られるとは、この俺も落ちたものだな」
憎まれ口をたたくものの、その声には覇気がない。
「私で良ければですけれど……何かできることがおありでしたらお申しつけ下さい」
「お前はいつもそんな風なのか」
脈絡のない問いに首を傾げる。
一体何のことだろう。
「そんな風、とは?」
「誰に対しても敬語だということだ。あの守護者とかいう者たちは、貴様の幼馴染みと呼べるものなのだろう?」
「ええ、そうですわ」
「であれば露李よりも長い付き合いであるはずだ。それなのに、些か他人行儀な振る舞いではないか」
そこまで聞いて、ああ、と海松は頷いた。
「守護家と神影の分家筋である私の家は、繋がりは強いですが、上下関係が厳しいのです。守護家内部も然りなのですけれど…私の家は代々、風花姫に仕えるための使用人のようなものですので」
敬語を使うように教育されているのです、という海松の言葉を聞くと、水無月は溜め息をついた。
「そうか。…だから、露李と似ているのかもしれぬな」
「私が、露李さまと!?滅相もありません、そんな恐れ多い」
「いや、似ている。あの子も…身内にすら溶け込むことを許されなかった。程度は違うが境遇は似ている」
「露李さまの境遇は私も聞いておりますが、比べ物になりません。最初、露李さまはまるで人形でしたわ。生気のない」
「それだけの月日を一人で過ごしてきたのだからな。…俺は、あの子を守れなかった。それなのに、誰かを恨みもせず、露李はどんなことだって受け入れる力を持っている。その点もお前に似ている」
「私がですか?」
「ああ。俺が言うのも何だが普通、敵だった相手を家に招き入れたりはしないだろう」
「それは、露李さまや結さまが信頼していたからで」
「もしそうでも、怖いだろう。自分の身を危険に曝すことになる。露李もそうだ。あの子は自分のことを気にもかけない。強さでもあるが、それだから脆い」
「…水無月様」
「貴様も、壊れてしまえば元には戻れない。露李が悲しむことは一切許さない」
何て優しいのだろうと、海松の胸が痛くなる。
これほどまでに誰かを想うことができるなんて、想像し得なかった。
優しい彼に愛された露李は、優しい。
優しさは強さだ。
どんなに苦しくても、彼女は。自分の主は。
生き抜いてきたのだ。
しかしながら、どうにも海松には水無月の表情とその言葉を結び付けることが出来なかった。
何か他の意図があるような気がした。


