「何だ。何か文句でもあるのか」
「いやねーけど…お前さ、露李がお嫁に行くときどうすんだ?」
純粋な疑問だったのだが、その場の空気がピキっと音を立てて固まった。
「あ?何か変なこと……」
「何で今この瞬間にそんなこと言うんだよっ」
頬をひきつらせたまま文月が無声音で結を叱りつける。
「お嫁……?露李、お嫁に行っちゃうの!?兄様をおいて!?」
案の定ショックを受けている水無月。
うわ言のように露李に問いかける。
この頃から肝が座っていたのだろうか、露李は全く動じずに水無月の目をじっと見つめた。
「なあに、露李」
「つゆり、大きくなったらにいさまと結婚する」
「なんだと露李──!?」
爆弾発言に今度は結を除いた全員が言葉を失う。
ただ一人テンション高く口を開いたのは勿論のこと水無月だ。
「うん!!そうだねそうしよう、露李は兄様と結婚しよう!それが一番良い!」
「いやいや良くねーから!露李、お前も!未来のことを簡単に決めるんじゃねーよ!?」
「わたし、かんたんに決めてません。守護者さま」
「口は達者だな!じゃなくてだな…」
「ほう、何があるというのだ。この俺が露李と結婚するのが不服か?事実上の血縁関係は無いし問題はなかろう」
「大アリだっつのー!ほら、ええと、文月!お前も何か言えよ!」
「えー何で俺なの。……この状況での婚約はずるいと思うよ、水無月」
俺なのと言っておきながら反論はしっかりする文月。
それに、と言葉を続ける。
「あんたガチでしょ。それなら尚更フェアじゃないと思うけど?」
「……貴様もか」
「もちろん。不満?」
「言うまでもない。不満に決まっているだろう」
水無月と文月のやりとりに首を傾げるのは疾風と静だ。
「なぁ理津。ガチってどういうことだ?」
「は?ふざけてんの?」
「あ、僕もそれ分からなかったんですけど。どういうことですか?」
「お前らマジかよ……説明すんのもめんどくせぇ」
「全く、怠惰な奴だなお前は」
「てめぇが分からねぇのが悪ぃんだよ!」
ふて腐れてしまった理津に訳もわからず静がとりなし、それが仇となる。
「皆さん落ち着いてください。露李様が困ります」
海松が滑らかながらもドスの利いた声で場を鎮めた。
「つゆり、にいさまと結婚するんです」
「そうですか、露李様は水無月さんとご結婚なさりたいのですね?」
「はいっ。にいさまはとても優しいんです」
「そりゃそうだよー。露李のためだからね」
「本っ当に露李にしか優しくねーけどな」
結も頬を膨らませてそっぽを向いた。


