コホン、と咳払いをして水無月が安心させるように微笑む。
「露李、俺は氷紀だよ」
「ひのりにいさま……?でも、とっても大きいです」
年の割にはしっかりした話し方が少し異様だった。
しかし、見たところ年は小学校の低学年かそれ以下か。
露李の時間を巻き戻されたことは目に見えて分かった。
「うん。未来だからね」
「みらい……?」
「うん、そう。ほら、目が同じだろ?」
そう言われて露李がじっと水無月の目を見、そして笑う。
「ほんとだ……にいさまの目」
「良かった。少し怖いだろうけど、大丈夫。俺がいるからね」
「はい」
恐ろしく物分かりが良い露李に水無月の表情が翳る。
「にいさま、この方たちは……?」
怖々と水無月の手を握り、露李が守護者たちを見つめた。
どう答えたものか水無月が黙ると、文月がすっと露李の目の高さまでしゃがむ。
「こんにちは。俺達は君の守護者だよ。君を守るためにいるんだ」
「しゅごしゃさま……?わたしを、守ってくださるの?」
「うん。聞いたことあるかな?」
「……はい。ほんとうですか?こわいものはいない?」
何度も繰り返される質問に、結がにかっと笑って頷く。
そしてわしわしと露李の頭を撫でた。
「おーそうだぞ!俺達がいりゃー怖いことは何にもねーからな!」
わずかに潤んだ瞳に、静たちがたじろぐ。
よほど怖いことがあったのだろうか。
「そうそう。ね、皆?」
くるりと振り向いた文月が恐ろしい笑顔を疾風たちに向け、後輩組三人もすとんとしゃがむ」
「安心しな、姫様」
小さな露李はそういう理津に頷き、
「何かあったらすぐに飛んでいきますよ」
静に微笑み、
「ああ。俺達が必ず守る」
疾風がそう言った時だった。
露李はパッと花が咲くように笑顔を浮かべた。
そして、疾風の髪に小さな手を伸ばす。
「おにいちゃん、とってもきれい」
「え……」
驚いて目を見開いていた疾風だったが、すぐに笑顔を返した。
何だか泣きそうな気分だった。
「ありがとう」
自分達と会うよりも前から彼女はこんなにも。
「露李は、ずっと露李なんだな……」
胸が苦しい。
守れなくて、ごめん。
辛い思いばかりさせて、ごめん。
「おにいちゃん、ないてるの?」
「泣いていない。大丈夫だ」
そう言って俯く疾風の頭を、結が乱暴に撫でた。


