【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


「露李ちゃん強いね!」


苦しげに肩を揺らして笑う大地に風雅が表情を渋くした。


「露李がこの風雅 結様より強いわけないだろーが!」


「そこなんすか結先輩」


「…馬鹿だな」


朱雀と水鳥が呆れたように呟く。


「あれ?露李ちゃんどうしたの?」


大地が自分達を凝視する視線に気づいて尋ねた。


「いえ、あの」


「なんだー?この風雅先輩に何でも聞いてみろ!!」


露李は困ったように笑い、口を開いた。


「あの、ずっと思ってたんですけど、今日は皆さん昨日と姿が違うんですね」


風雅がああ、と頷く。


「そりゃまぁ、あれだろ。あの姿で歩いてたらまず目立つし気持ち悪がられるからな」


金色の髪に翡翠の目だった風雅は茶髪にごく普通の茶色の目。

碧の髪に藍の瞳だった朱雀は黒髪に茶色の目。

金茶に浅葱の瞳だった大地は焦げ茶の髪に茶色の目。

水鳥の灰色がかった茶色の髪色は変わらず、紫の瞳だけが茶色に。

知恩も黒髪なので萌黄の目だけが茶色になっている。


「……そう、なんですか」


露李がいまいち納得しないようなので、朱雀が目でどうしたのだと訴える。


「私は、綺麗だと思ったので。気持ち悪いなんて一度も思いませんでした」


「……そんなこと言われたの、初めてだよ露李ちゃん」


大地がにこっと露李に笑いかけた。


「ありがとな」


朱雀も目を細めた。


「ありがとうございます、露李先輩」


知恩も嬉しそうに笑った。


「変わったやつだな」


水鳥が呟いた。

露李はお礼を言われたのが少し恥ずかしくて下を向く。

しかし、水鳥が露李に小さく呼び掛けた。


「…ごめん。さっきのはやりすぎた」


「…私こそ。ちゃんと強くなりますから」


ふいっと顔を背ける水鳥。


「さっ、早く食うぞー!」


風雅がいつもの倍の声量で叫んだ。


「ほんっと分かりやすすぎだよ結」


「うるっせ!」


ぱかん、とそれぞれが弁当を開ける。


「わぁ…」


海松が作った露李の弁当はもったいないくらいに美味しそうだ。

思わず小さく歓声を上げてしまった。


「あー、海松のつくる弁当がまた上手いんだよなー」


朱雀がじと目で露李を見つめる。


「あ、あげませ……あげないよ」


「本当だよね。俺あの子の卵焼きは絶品だと思う」


横から笑顔で言い放つ大地。


「文月先輩まで…ダメです」


「そんなちっせぇ口で食えんのか?何なら口移しで食べさせてやろうか?」


水鳥の危ない発言に露李が顔を真っ赤にする。


「だ、だめで…だよもっと嫌だよ」


「理津、お前は立ち直りが早すぎる。図々しいぞ」


「お前も一緒だろうがよ」


朱雀と理津が言い合いを始めてしまった。

そこへ知恩がやって来る。


「先輩、僕もダメですか?」


小首を傾げる知恩の可愛さに折れそうになるが、


「え、と…一つくらいなら?」


しかし、ここに知能犯がいた。

露李が箸で挟んだ卵焼きに近づき、


「あー!結先輩!」


ぱくりと一口。


「はっ、甘いな露李!」


風雅はしたり顔でもきゅもきゅと口を動かす。


「わ、私の卵焼き…」


「そうだよ最低だね結。会って間もない子から直とか」


「んだとー!文月も欲しがってたじゃねーかよ!…すまん露李」


「何のことかな」


「疾風!」


「何で俺なんすか!」


「卵焼き…」



ぎゃいぎゃいと煩い中。


「あ、あ。あれって…」


「あー。間接キスだ」


顔を真っ赤にする知恩と、顔色を変えずに露李の弁当から煮物をつまむ水鳥だけが冷静だった。