大きな音を立てて襖が開く。


「え……蒼炎と星水晶?」


海松と水無月を予想していた露李は目を見張った。

だがそもそも、その二人はこんな風に何も言わずに襖を開けたりしない。


「主さまが、よんでる」


生気のない目でこちらを見る彼女たちから視線を逸らし、露李は少し身構えて足を踏み出した。


──主さまって誰?


この状況を打開するのにはついていくしかないのだろうが、どうにもおかしい。

海松はきっと、自分の式たちに主さまなどと呼ばせたりはしない。


それに、海松の造り出す式は人形だったはずだ。

意図せずとも足は遅くなり、二人の式が立ち止まって無表情に露李を振り返る。


またその瞳にぞくりとして立ち止まると、


「んもうっ、遅いですわっ」


空気が振動しているのが伝わるような声が響いた。


「この声……!」


一気に記憶が押し寄せ、酷い頭痛が露李を襲った。

あの日、あの場所。


妖艶な女性。


その姿を思い出した瞬間、身体がどこかに引き寄せられるのを感じた。