「あら、さすがに違いますわね。花姫の魂を持つ特異な風花姫は」


蝶のように軽やかな声が辺りを突き抜けた。

その声があまりにも神聖で、荘厳で、身体が勝手にその声の方向にひれ伏したくなるような。


「な、に……これ」


恐ろしい感覚に理解が追いつかない。

何とか声の主を辿る。


「貴女は……」


艶やかな濡れ羽色の黒髪、真っ赤な目、大胆に気崩した着物。

その大きく螺旋状に巻いた髪は一つにまとめられていて、どこからどう見ても大人の女性の雰囲気だ。


美しいその姿に目が眩みそうだった。


「こんにちは、露李姫。その子を返して下さる?」


返事をする前に彼女が露李に手をかざし、委員長が女の方に吸い寄せられた。


「私(わたくし)、朱音と申しますの。以後お見知りおきを。──また、会いに来ますわね」


意味深な言葉を残して朱音と名乗った女が消えた。



「露李っ!!」


へなへなと崩れ落ちると、疾風と理津が駆け寄って来る。


「大丈夫か!?今のは……」


「分からない…でも」



ただ者じゃない、と呟いて露李は意識を手放した。