「露李ー、コートかけてきたよ」
「ありがとう兄様!海松ちゃんもちょうど良かった!」
水無月が部屋に入ってくるのを目に入れると、露李は思いきりよくその腕に飛び込んだ。
今か今かと待ち構えていたのだ。
「わ、どうした?」
いきなりの出来事に驚きながらも、水無月は蕩けるような笑顔を浮かべた。
「露李様?ちょうど良かった、とは?」
海松が水無月の腕の中の露李に不思議そうに問いかける。
「うん、皆に渡すものがあるの」
そう言うなり、いそいそと部屋の隅から紙袋を持ってくる。
テーブルの上に散りばめられたのは、
「バレンタインです!」
「…朝のは何だったんだ?」
「何よ疾風、私があんなのを本気で渡したとでも?」
「ああ」
即答に露李の笑顔がぴくりと凍る。
仕方ない、そうよ仕方ないのびっくりしてるのよね!
「というわけで!いつもありがとう、感謝の気持ちです!」
そう言いつつ皆に配っていく。
緑のリボンは結、水色は文月、紫は理津で赤は疾風、黄緑は静で銀色は水無月、深緑は海松。
「私にも…?」
驚いた顔で海松が露李を見つめた。
それに大きく頷いて、海松の手をとる。
「お世話になってるし、友チョコ?だよ」
「露李様…」
「もう、様はいらなーい」
「うう、露李さん~~っ」
泣きだしてしまった海松に男性陣はおろおろするも、露李はにっこりと笑った。
「さあ皆さん、食べてくださいね」
一人感慨深そうな水無月を少し気にかけながら、露李はそう促したのだった。


