「ただいま」
いつもの部屋に行き、中へ声をかける。
「お帰り」
「おお、帰ってきたな」
疾風と理津がいつも通りに座って露李をむかえた。
水無月は露李のコートを直しに行ってくれている。
沈黙が三人を包んだ。
「…何かされたか」
疾風が言いづらそうに切り出した。
露李はその表情を見てクスリと笑う。
「何で何かされたことが前提なのよ」
「いや…この前も委員長はトゲトゲしていたから」
「大丈夫よ。それに、私も戦える位の能力は持ってるし」
「そんなんで襲われたらどうすんだお前。いいか、俺たちはなぁ──」
理津が声を荒らげて言うが、露李はまたも笑った。
その笑みにどこか有無を言わせないものを感じ、口を閉ざす。
「だって、皆が来てくれるでしょ?」
「…それは行くが。でも、心配だ」
疾風が眉を下げて露李を見つめる。
「ありがとう」
隣に座って言うと、二人とも柔らかく微笑んで露李の頭を撫でた。
そして、理津が思い出したように頬杖をついて露李の方を見た。
「そうだ露李。文月先輩がお前のこと心配してたぞ襲われたらどうしよーってな」
「そっか、会ったらお礼言わなきゃね」
「そうだぞ。あとあれ、何だ。あの残飯みたいな……」
「ちょっといきなり失礼ね!」
「委員長にはキレーなの渡してんだろ!」
「うるさいわね当たり前でしょ!人様に渡すのに!」
「さっきから思っていたが理津、お前が言うと何でも変な感じに聞こえるのはどうしてだ」
「そう感じる方がやらしーんだよ。むっつり」
「お前と一緒にするな…」
「あー、それは確かに嫌かもー。理津ってパット見頭悪そう」
「てめぇら覚えとけよ!」
ぎゃんぎゃん言い合っていると、すっと襖が開いた。
「──ただいま」
息を切らした文月が立っていた。
思わず立ち上がって駆け寄る。
「お帰りなさい!」
「──うん」
いつものように落ち着いた微笑み。
安心して、自然と笑顔がこぼれる。


