【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

***


「ただいま帰りましたー」


結と水無月に挟まれて帰り、玄関で雪を落とす。


「お帰りなさい」


笑顔で迎えてくれたのはいつも通り海松だった。

何事もないように見えるが、きっと心配してくれていたのだろうと笑顔を返す。


「ただいま。遅くなってごめんね、海松ちゃん」


「いいえ。ご無事で何よりです。それよりも疾風さんたちが待ち構えてますよ」


「疾風たち?」


きょとんとして露李が首を傾げると、結が口を開いた。


「あいつら今日の結界当番だったからなー。お前のこと心配してたぞ」


「本当に?申し訳ないなぁ」


「露李が申し訳なく思うことなんてないよ」


ぽむぽむと頭を撫でてくれながら水無月が微笑む。


「文月は?」


結が考えるような顔をして海松に問う。

その表情に何かを感じたのか、海松も眉を下げて露李の雪を払う手を止めた。


「まだ、戻っていらっしゃいませんが……」


「え?文月先輩、今日なんか御用事だったんですか?」


不思議そうな顔で振り返る露李に、結はいや、と口ごもる。

いつもなら心配するようなことでもないが、今日は少し気になった。

しかし言えることでもない。


「もう、帰ってるはずなのにってことですか…?」


露李の声がわずかに震える。

色々なことが──本当に沢山ありすぎて、敏感になってしまっている。

失うことは何よりも恐ろしい。

けれど、その気持ちが周りの人々を自分に縛りつけてしまうということは分かっている。


露李はこれ以上、自分という存在に皆を縛りたくはなかった。

守護者や水無月、海松。


それはどうしようもなく我儘で、自分勝手な感情だ。

分かっている。


「露李、心配しなくても大丈夫だから」   


「うん、ありがとう。分かってる」


だから、笑う。