三人が帰っていくのを見届けながら、文月は木にもたれて溜め息をついた。
今日の自分はどこかおかしい。
夕方の光が美しく映える空を眺めながら、白い息を吐く。
疾風と違って文月は寒さに強い。
どちらかというと夏の暑さよりも好きかもしれない。
張りつめた空気が心地好いからだ。
警戒を怠ってはいけない毎日で、より心を引き締められるからだ。
──露李ちゃんのこと好きだから。
自分で放った言葉が不意に思い出され、ガバッと身体を起こす。
「うわ……」
どう考えても宣戦布告のような、それもあの不器用な幼馴染みに。
らしくもない、どうして。
自問自答しても答えは出ないだろう。
「やだなあ…」
呟くと、文月の声に呼応するようにして枝がするすると伸びてきた。
小さい頃には慣れた現象だったが、この頃コントロールできるようになってからは殆ど無かった。
「余裕ないなあ、俺」
目を腕で覆い、瞼の上の冷たさを楽しむ。
委員長と露李が一緒にいると聞いて、心配せずにはいられなかった。
そしてそれ以上に、結の分かりやすさに焦った。
結が露李を大切にしていること─結だけではないが─も、知っていた。


