「ゆ、い…先輩」
水鳥が舌打ちをし、呪縛を解く。
いつも憎まれ口を叩いてはいるが、風雅には逆らえない様子だった。
「なーにしてんだ?早く飯食うぞー」
風雅は廊下に座り込んだ露李を見やり、すっと目を細めた。
「疾風、理津。お前ら先に行け。裏庭で文月と静が待ってる」
「や、結先輩、送迎は俺が」
「おい、アホ頭。結が代わるっつってんだから行くぞ」
水鳥が面倒くさそうに歩いて行く。
朱雀もいくらか迷い、歩き出した。
「お前らなー!こいつに妙な気起こすんじゃねーぞ!」
後ろから風雅が叫ぶ。
「さーてと。お前なにされてたんだ?」
咄嗟には答えられない。
一番気安い態度をとっていた水鳥が、一番自分の存在を疎ましく思っていた。
あからさまな警戒心と不信感をぶつけられて、思ったよりも傷ついていることに気がついた。
会ったばかりで信用されないことなんて分かっていたのに。
「ま、大っ体は想像つくけどな。悪い…あいつのこと許してやってくれねーか。俺の目も行き届いていなくて悪かった」
風雅が露李の前にしゃがんで眉を下げつつ、にこっと笑った。
「許すなんて、私はそんな…当たり前です。皆さんに信用してなんて言えません」
「それは違うだろ」
「え?」
「俺らにも守護者として思うことはある。勿論お前だって色々ある。けど、お前を信用しないのとお前に何をしても良いってのは違う」
お前だって急に風花姫とか意味わかんねーだろ。
風雅は呆れたように笑う。
「だから堂々としてろ。お前は何であろうと風花姫なんだからな?ごめんな、あいつは俺がどうにかするから」
すっと手が差しのべられる。
「行くぞ」
「はい」
自分で立てないわけではなかったが、なぜかその手に甘えてみたくなった。


