「あ、ねえねえ!神影さんバレンタインどうするの?」
「バレンタイン!?」
名前だけは知っている文化だが、巫女の里でもそれが浸透していたことはなかった。
「もうすぐじゃん。好きな人とかいないの?」
「好きな人?」
「そうそう。私、今年こそ委員長にチョコ渡すの。神影さんは?理津くんに渡すの?それとも朱雀?」
「あ、いや私は」
好きな人なぞ考えたことがなかった。
昨今の女子高生はませているな、と同い年ではない視線で感心した。
「いるなら伝えた方がいいよーお、せっかくのバレンタインだし!チョコ渡しなー!」
ああ、うん、と目を白黒させながらようやく頷くと、両肩に手が置かれた。
見知った気に、恐る恐る振り向く。
「へーえ、バレンタインねぇ?」
にやりと妖しげに口角を上げた理津。
「…面白そうだな」
なぜか真剣な目をした疾風だった───。


