「なんか大変そうだね?」
席について話しかけてきたのは、学級委員長だった。
人望があり、人当たりも良い好青年だ。
「うん…なんか大したことはしてないのに恥ずかしいな」
無難な返事をしておくと、好青年は口の端を片方だけ上げて笑った。
「気楽だね」
ぞわ、と悪寒が走ったのは気のせいか。
爽やかな彼の笑みが歪んでいるように見えた。
冷たいものがひやりと心に落ちてくる。
今の、何。委員長ってこんな人だったっけ。
じわりと手に汗が滲む。
咄嗟に怖いという感情が露李の心を占めた。
「まぁ、私はちゃらんぽらんしてるからあれだけど。疾風は生真面目だから大変だよ」
「そう」
ちゃんと笑えているだろうか。
ひきつった表情筋がひくひくと震える。
「───おい」
露李の机が大きな音を立てる。
逞しい手が置かれていた。
驚いて後ろを振り返ると、いつになく鋭い目の疾風が委員長を睨んでいた。
女子の群れを捌きつつも理津もこちらに紫の気を飛ばしてきた。
「こいつに何か文句があるのか。委員長」
周りの注目など気にしている余裕などなく、安心したと同時に冷や汗が引いていく。
「ごめん、そんなつもりじゃなかった。起こらないでよ朱雀。神影さん、ごめんね?」
「あ、うん……気にしてないよ」
再度笑顔を作ったが、真っ赤な嘘だった。
なおも睨んでいるのに戸惑ったのか、疾風の友人の一人が寄ってきた。
「疾風くーん。何でそんな睨んでんのよ?」
少し軽い雰囲気で、長い前髪を上に上げた生徒だ。
「…南波。何か委員長、いつもと違わないか」
唐突にもそう問われて少し怪訝な顔をするも、南波は首を傾げた。
「そうかね?つーか、お前が意識しすぎなんじゃね」
「は?どういうことだ」
「なぁ委員長?露李っちが委員長と喋ってるから妬いてんのよ」
「はは、そうだね。からかいすぎたかも」
いつもの爽やかな笑顔を見せた委員長は、まだ南波と何やかや言い合っている疾風から目を逸らさずに露李の方へ乗り出してきた。
「な、なに委員長」
思わず身体を身体を固くする。
「大変だね、過保護な“守護者”を持つと」
「え……?」
「何か守護者って感じ」
深い意味は、ないのか。
また少し不安になり、曖昧な笑顔を浮かべた。


