「露李姫は疑問に思ったことがないでしょうか。霧氷が、どのようにして世界を業火で炙ったのか。なぜそんなことが出来るのか」
「…あまり」
考えたことがなかった。
恥ずかしくて下を向く。
守護者や水無月の面々も同じようで、少し目をそらした。
「奴が、花姫と愛の契りを交わしていたからです。霧氷は彼女と愛し合うことで、途方もない力を得た。そして、姫様。ここからですが、鬼神は世界を治めることになっているのです」
「セカイヲオサメル?」
「露李、現実逃避しないで。日本語日本語」
何だか途方もなく難しい話だ、と露李は内心頭を抱える
。
「この世にはここ以外にも世界があるのです。それを、一歩引いた立場から神は治めなくてはならない。そう──この世界は神の掌の上なのです」
「……今の世界が、その神って奴が望む世界だと言うのか?」
疾風が疑わしそうに尋ねた。
それについては、と秋雨も難しい顔をする。
「風花姫を輩出したり、守ったりする者を作るにも世界が必要です。だからこの世界がある。この世界に神の干渉は許されていない。──それを、霧氷は利用したのでしょう」
「利用?」
「神──花姫には兄上がいました。その兄上がいる里を焼いたのです。詳しいことは分かりませんが…強大な力を持った霧氷は、干渉したのです」
うまく理解できずに皆が口を閉ざす中、文月が顔を上げた。
「干渉というのは、つまりどうすることを言うのかな」
「分かりやすく言うと、運命を変えることです。花姫の兄上の存在を消し、彼が住んでいた里を焼いた。そうすることで、生まれるはずだった命が無に帰したのです。」
全員が息を飲んだ。
禁忌を犯した霧氷───。
「風花姫は、一族が世界に干渉した際、粛清のためにその者を特別な武器を以て封印しなければならない」
それが掟だ、と秋雨は言う。
首を絞められているような息苦しさが露李を襲った。
ということは、私は───。
「それは……私がいずれ神になる日が来る、ということですか?」
全く、理解できないけれど。


