物陰から一部始終を見ていた男が一人。
「疾風、てめぇはやっぱりやらかしたな」
「やっぱりとは何だ」
階段の手すりから身軽に着地しながら、水鳥が口の片端を上げて笑う。
「露李は神影家直系なんだろ?しかも覚醒がまだ…どんな扱いを受けてきたか位はちっせぇ頭でもわかるんじゃねぇのか?」
「うるさい」
ばつが悪そうに顔を背ける朱雀。
「はっ、ガキだな。…けど」
「何だ?」
「いちいちそんな風に深入りしてっと傷つくだけだ、なんせ俺達は道具だからな」
「…お前からその言葉を聞くとはな」
「疾風も思ってんだろ?…俺はまだ死ぬ気はないんでね。ましてや女の子一人のためとか」
気まぐれな水鳥は笑みを残し、ひらひらと手を振って廊下の奥に消えた。


