これから、彼等はどうするのだろうか。


危なげな手つきで料理に挑戦する彼等を露李は複雑な表情で眺めた。


「露李ちゃん。俺だけど」


後ろから文月の声がして、振り返る。

そこには待っててと言ったはずの水無月も一緒だ。


「先輩。兄様。何かあったんですか?」


「いや、特には。何してるのかなと思って」


文月はなかなかに混沌とした状況の台所に目をやり、苦笑いする。


「露李ちゃんは優しいね」


え?と不思議そうな顔をする彼女に、文月は曖昧に笑った。

これから先、どう生きていくか分からない彼等に自炊を教えるとは。


「まあ、料理の仕方さえ分かってれば何かしら食べることはできるよね」


そう納得するものの、露李がいっこうに話そうとしない彼等の過去。

信用していないと言われているようで痛かった。


こうも彼女が気にかけるのには何か重大な理由があるのに違いないのだ。


「美喜が目覚めるまで、出来るだけのことをしたいの」


美喜が目覚めたら、出て行く。


露李は秋雨の怪我が治るまで待ってはどうかと提案したが、彼は断固としてそう言い張った。

鬼の武器精製で造られた傷は簡単には治らない。

だからこその提案でも、秋雨は飲まなかった。


「そっか」


文月が優しく頷くのを見て、露李は立ち上がってエプロンを外す。


「今は何をしているんですか?」


「閉心術。結がしごいてるよ」


「すみません、抜けて来て下さったんですよね。氷紀兄様、文月先輩に我が儘言ったんでしょう」


腰に手をあててそう言う露李に、水無月はぎくりと固まった。

怒られることを分かっていて今まで黙っていたのだが、あまり効果は無かったらしい。


「ありがとうございます、先輩。兄様、私と美喜の様子を見に行きましょう」


露李にたじたじの水無月を横目で見ながら、文月は可笑しそうに笑ったのだった。