*・*・*・*・*・*・*
「…おい、お前」
「ひゃいっ」
チャイムが鳴るなりガターンと椅子の音を轟かせる生徒。
勿論朱雀だ。
「ちょっと来いよ」
制服の袖を掴まれて歩くこと数分。
通る道通る道で奇声が上げられ、さすがに疲れてきた。
「な、何ですかっ」
「さっき何て言おうとした?」
人気のない廊下に来て、やっと朱雀が口を開く。
「さっきですか?」
「数学の前。俺たちの関係を聞かれていただろう。鮎原に」
「え、ま、そうですけど…」
「風花姫と守護者、とか言おうとしてないよな?」
ぎろ、と睨まれた。
しかし露李も巫女の里で育ってきた身。
使命を知らなかったとはいえ重要性は理解していたし、知った今では尚更だ。
そこまで馬鹿ではない。
「そんなこと言うわけないじゃないですか」
「信じられないな。悪いが姫様とはいえ鈍そうだ」
今日も朝転んでただろ、と締めくくる。
けれどそんなことは露李の耳に入ってはいなかった。
「馬鹿にしないで」
露李が鋭く朱雀を睨みつけた。
しかし、すぐに表情を削ぎ落とす。
「…これでも、風花姫の立場のことは重々分かっているつもりです」
「お前、」
朱雀が目を見開いて露李を見る。
朝の笑顔とは一変して、悲しげな光をたたえる瞳に驚きを隠せなかった。
「ごめんなさい」
ひらりと踵を返す露李を立ち尽くして見送る。
「何だ、今の──」
強気に去っていく姫の背中は、なぜか泣いているように見えた。
「…おい、お前」
「ひゃいっ」
チャイムが鳴るなりガターンと椅子の音を轟かせる生徒。
勿論朱雀だ。
「ちょっと来いよ」
制服の袖を掴まれて歩くこと数分。
通る道通る道で奇声が上げられ、さすがに疲れてきた。
「な、何ですかっ」
「さっき何て言おうとした?」
人気のない廊下に来て、やっと朱雀が口を開く。
「さっきですか?」
「数学の前。俺たちの関係を聞かれていただろう。鮎原に」
「え、ま、そうですけど…」
「風花姫と守護者、とか言おうとしてないよな?」
ぎろ、と睨まれた。
しかし露李も巫女の里で育ってきた身。
使命を知らなかったとはいえ重要性は理解していたし、知った今では尚更だ。
そこまで馬鹿ではない。
「そんなこと言うわけないじゃないですか」
「信じられないな。悪いが姫様とはいえ鈍そうだ」
今日も朝転んでただろ、と締めくくる。
けれどそんなことは露李の耳に入ってはいなかった。
「馬鹿にしないで」
露李が鋭く朱雀を睨みつけた。
しかし、すぐに表情を削ぎ落とす。
「…これでも、風花姫の立場のことは重々分かっているつもりです」
「お前、」
朱雀が目を見開いて露李を見る。
朝の笑顔とは一変して、悲しげな光をたたえる瞳に驚きを隠せなかった。
「ごめんなさい」
ひらりと踵を返す露李を立ち尽くして見送る。
「何だ、今の──」
強気に去っていく姫の背中は、なぜか泣いているように見えた。


