【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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「…おい、お前」


「ひゃいっ」


チャイムが鳴るなりガターンと椅子の音を轟かせる生徒。
勿論朱雀だ。


「ちょっと来いよ」


制服の袖を掴まれて歩くこと数分。

通る道通る道で奇声が上げられ、さすがに疲れてきた。


「な、何ですかっ」


「さっき何て言おうとした?」


人気のない廊下に来て、やっと朱雀が口を開く。


「さっきですか?」


「数学の前。俺たちの関係を聞かれていただろう。鮎原に」


「え、ま、そうですけど…」


「風花姫と守護者、とか言おうとしてないよな?」


ぎろ、と睨まれた。

しかし露李も巫女の里で育ってきた身。

使命を知らなかったとはいえ重要性は理解していたし、知った今では尚更だ。

そこまで馬鹿ではない。


「そんなこと言うわけないじゃないですか」


「信じられないな。悪いが姫様とはいえ鈍そうだ」


今日も朝転んでただろ、と締めくくる。

けれどそんなことは露李の耳に入ってはいなかった。


「馬鹿にしないで」


露李が鋭く朱雀を睨みつけた。

しかし、すぐに表情を削ぎ落とす。


「…これでも、風花姫の立場のことは重々分かっているつもりです」


「お前、」


朱雀が目を見開いて露李を見る。

朝の笑顔とは一変して、悲しげな光をたたえる瞳に驚きを隠せなかった。


「ごめんなさい」


ひらりと踵を返す露李を立ち尽くして見送る。


「何だ、今の──」


強気に去っていく姫の背中は、なぜか泣いているように見えた。