「け、警戒なんて」
「してるじゃない」
「えと、私ただ…女の子と話したことってあんまりなくて」
巫女の里では力の開花の兆しがなく、かつ直系だということもありずっと敬遠されてきた露李にとって同性は縁遠いものだった。
「それって友達いないってこと?あ、でも今朝朱雀と来てたね」
「あ、うんまあ…」
友達、なのかな。
どうして海松ちゃんとは話せたんだろう。
あの独特の優しい雰囲気のせいかな。
「もしかして神影さん男好き?」
「へっ!?」
「違うの?まぁそれはそうと」
「え?」
「名前言ってなかったわね。鮎原 美喜よ」
「鮎原さん…」
「美喜で良いわよ。私も露李って呼んでいい?」
露李は弾丸のように、しかし淡々と発せられる言葉に目を白黒させながら頷いた。
「それにしてもあの朱雀と恋仲だとはねー」
美喜が頬杖をついて朱雀を眺める。
「恋仲、じゃないよ。私たちは──」
「おい」
隣から低い声が聞こえた。
ちょうど、数学教師が教室に入ってくる。
「す、朱雀さん?」
「黙ってろ」
射ぬくような眼光にたじたじとしながら、前を向いた。


