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「んーっ、」

バスを降りると山や田畑が広がっている。

九月とはいえどまだ日差しは強い。

神影 露李(みかげ つゆり)は辺りを見回した。

この先に私の暮らす家があるらしい。

場所が分からないので迎えが来てくれるはずが、そんな様子は一たまりも感じられない。

神影家。

代々続く巫女の家で、神影家の者は霊力を保持している。

露李はその直系の子孫で次期後継者である。

そして、この家では神影家代々の習わしで最も力の強い者が一家を統率する〈風花姫〉になると言われている。

風花姫は特別な使命があるというが、露李にはまだ教えられていない。

露李の脳裏に祖母の言葉が過った。

風花姫は村で暮らすことになる、と伝えられここまで来たわけだが。


「風花姫とか急に言われてもな…」


疑問は消えない。

まだ実感が湧かないのである。


露李は神影家に伝わる力を持っていない。


ずっと自分に力の欠片も現れなかったのだ。

そんな者が次期後継者、そして〈風花姫〉になれたことにも驚きが隠せない。

覚醒などと言いながら、本当は厄介払いのつもりかもしれない。



そんなことまでが頭に浮かび、露李は首を傾げた。