「悪いな露李。こいつはこの通り悪いやつなんだよ」
朱雀はフォローする気などさらさら無いらしい。
そして、
「うああ悪かった文月!言うな!俺の黒歴史だ!」
「えー?俺も言いたくはなかったんだけどねぇ、結が煩いし仕方なく…」
何やら行われていた勝負は風雅の惨敗に終わったようだ。
「結先輩の黒歴史ってそんなに激しいんですか?」
朱雀に尋ねる。
「あぁ、まぁあの人は色々あるんだよ。別にうしろめたいことじゃないけどな」
「そうなんですか…」
なんだか分からないが、幼馴染みの経験値だろう。
露李が頷くと、水鳥が身を乗り出してきた。
「例えばだな、姫。結は小五まで一人でトイレに行けなかったんだよ」
それは。
「おぉいこら理津てめー!」
顔を真っ赤にした風雅が走ってくる。
「本当のことだろ?なぁ文月先輩」
「そうだねー、否定はできないね」
「何で文月は先輩呼びなんだよ!」
「精神年齢の差だな。つか静はカワイソーだったよなあの頃」
水鳥が知恩を振り返った。
巻き込まれたくない、と気配を消していた知恩がびくりと肩を跳ねさせる。
「そうそう、毎日毎日トイレ付き合わされてねー。横柄な態度だし」
「うるせー!」
あぁ、朝から賑やかだな。
楽しい。
露李の頬が自然に緩む。
巫女の里での風当たりが強かったせいか、静養に来たような気持ちになる。


