「いつもそうだ、お前は…花姫は」
湿り気を帯びた声音。
張り裂けそうなほど悲痛な声だった。
聞いているだけで胸が痛くなる、そんな声だ。
「有明、様…?」
有明がゆっくりと顔を上げ、露李と目を合わせる。
その瞳からは、さっきまであった殺意も狂気も消え失せていた。
あるのはただただ、『悲しい』という感情のみ。
一つの感情が有明の全てを物語っていた。
「おい、露李!」
結が呼び止めるも、思わず彼女の方へ歩み寄る。
拘束されたままの有明、それを悲しそうに見つめる宵菊。
「花姫も、露李姫も。いつも、私から何かを奪ってしまうんだ。なぁ、どうして」
冷たい風が吹いた。
血の臭いが混ざった、残酷な香りのする風だった。
「どうしていつも…皆いなくなってしまうんだ…?」
震える声でそう言葉を紡ぎ、無理矢理に口角を上げようとする。
その瞬間、ぽろりと彼女の瞳から雫がこぼれ落ちた。
「お前は周りを惹きつけて、私は…どうしていつもどこかで間違ってしまうのだろうっ…」
初めて見る有明の涙に、そこにいる全ての者が息を飲んだ。
暫しの沈黙の後、有明は再度、露李を見上げた。
そして、口を開く。
「ずっと、待っていたんだ。霧氷様の帰りを」
静かな声だった。
「私は霧氷様の、婚約者だった───」


