【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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急に、ゴオッと風が吹いた。


「もうやめましょう、有明様」


悲しさを含んだ声が聞こえると同時に、身体がぐっと引き寄せられた。


「ったく、心臓がいくつあっても足りねーよ馬鹿」


「結先輩!?」


まーた泣いてんのか、と涙を拭ってくれる。

温かい結の手が頬に触れた。


「オラ早く術解け術」


「だってこれどうしたら」


あわあわと困っていると、額にすっと冷たいものが触れた。

しかし、先ほどの有明の刀とは全く違う冷たさだ。


「雹雷鬼…」


雹雷鬼が触れた所からじわじわと温かさが広がり、前触れも無く視界が開けた。

目の前には雹雷鬼がキラキラと光っている。


「ありがとう、雹雷鬼」


吸い込んだのか、血糊ひとつ付いていない刃先がふわりとまた銀色の光を放った。


露李の言葉を聞くと、柔らかい銀色の霧となって消えた。

胸の辺りがぽっと温かくなり、雹雷鬼がそこにいるのだと実感する。



「何をする宵菊」


少し離れたところで、有明が宵菊のトゲ無し版の薔薇の蔓で拘束されていた。


「ちょっと水無月、突っ立ってるなら手伝って下さらない?」


水無月が苦々しげに近づき、片手をかざした。

有明の動きが止まり、銀の気に覆われた姿から金縛りの術がかけられたのだと分かる。


「宵菊…ふざけるな。お前までもが私を裏切るつもりか。思い上がった行動は慎むことだな」


蔑むような口調に宵菊が項垂れる。


「秋雨っ、睡蓮!星月夜!私をっ…!」


助けろ、と訴えるが。


皆、一様に俯くばかりだった。

苦しげに表情を曇らせ、一言も話さない。


一瞬で、気が揺らいだ。

ぷつりと有明の中の何かが切れたような気がした。


「あの時の約束はどうしたっ!?私にっ、一生ついてくると…!」


「馬鹿じゃないの?復讐に狂いまくったババアについていくわけないだろ」


はっ、と鼻で笑う水無月。


「早くこっちへ来い!」


叫ぶも、誰も動かない。

否、動きたくなかったのだ。


「露李姫、またお前は…」


ゆらりと有明が力を使おうとするが──目の前の光景に、呆然とした。


「なにを、している…」


露李の前に守るように立ちはだかった星月夜たちに、声が掠れる。


身体から力が抜け、だらりと腕が垂れ下がった。