ボタボタと赤い血が滴り、それを見てやっと、自分が斬られたのだと理解した。
いつものことだが、何だか他人事のように観察してしまう。
後ろで何かが動いた。
さっと距離を取って辺りを見回す。
有明のことだ、どんな手段を使うか分からない。
誰もいない。
だが今はその気配を感じないことの方が今は恐ろしい。
どんな術を心得ているのか、全く検討がつかない。
しかし。
「…そこですか」
右側に気配を感じて雹雷鬼を振るう。
「お前…っ」
声が聞こえたものの、刃に当たるものはない。
即座に左手に持ち換え、後ろめがけて振るった。
布の切れる音がした方を振り向くと、息を切らして腹部を押さえる有明がいた。
彼女の赤い着物でも分かる、かなりの出血量だ。
少し心が痛む。
一度でも自分と関わった人間を傷つけるのは、気持ちの良いことではない。
「左手を斬った、はずだ…」
信じられない、という顔でこちらを見る有明が何だか幼く見えて─ふ、と小さく笑った。
「あれ、忘れちゃいましたか?私、剣は両利きなんです」
確かに言ったんだけどな、と心の中で呟く。
一緒に暮らしたあの日々に。
「それに私…何だか傷、治ってきてるみたいで」
そう言いつつ、有明の真正面からの刃を受け止める。


