垂らしていた髪を一つに纏め、有明と向き合う。
「─行くわよ、雹雷鬼」
ふわりと右手が温かくなったのを感じ、ふっと口角を上げた。
大丈夫。私には雹雷鬼がいる。
「笑っているほどの余裕があるとは、さすがといったところか?」
有明が片手を上げるや否や、そこから濃青の光が飛び出す。
夜闇に溶け込むように迫ってくるそれを軽く避け、代わりに雹雷鬼で受け止めた。
見る間に飛ばされた気が吸い込まれていき、雹雷鬼はいきいきと輝き出す。
「そうか、君は吸収が得意だったな」
「得意じゃないです。まあ強いて言うなら、今、雹雷鬼と心が通ったからじゃないですか?」
言いつつ、雹雷鬼を凪ぐ。
有明の呪がパシリと消える音がした。
その瞬間、彼女の気が大きく揺らぐ。
さすがの露李もピクリと反応した。
──怒っ、た?
直感で思ったことだが、それは大いに当たっていた。
少し遠くにいる有明が低く唸る。
「小癪な…」
そう呟き、顔を上げる。
その目が真っ青に染まっていた。
ぞくりと背中に悪寒が走る。
その何者も映さないような瞳が、露李にはひどく空虚に─恐ろしく思えた。
「もう情け容赦はせぬ」
詠唱もせずに精製した刀を握り、銀色の髪を風に揺らす。
「…死ね」
何も、見えなかった。
それなのに──。
「いっ…!!」
左腕に激痛が走った。


