疾風なのに、疾風じゃない。
魂は疾風のはずなのに、もう二度と自分に笑いかけてくれることはない。
寒がりで、ぶっきらぼうで。
飲み物を渡してくれた手。
けれど、これはもう彼等の魂でない。
「露李─」
獣と、目が合う。
露李の中で、何かが切れた。
「うわあああああああ!!!」
叫びながら、雹雷鬼を疾風へ向ける。
ただやみくもに斬りつけ、邪気に突っ込んで行く。
その一振りが痛々しく、涙がそれとともに舞った。
【ぐおおお…】
後ろから、黒みがかった萌黄の邪気が飛んできた。
次に、紫。浅葱。
「静くん、理津、文月先輩…どうして」
気遣い上手で、丁寧で。いつも優しかった静。
チャラチャラしているようで、乱暴で、でも人一倍真面目な理津。
温かくて、少し意地悪で頼もしい、文月。
そんな思い出すら、忘れたというのか。
そんなの。
「うっ」
邪気をまともに浴び、身体に毒が回るように痺れていく。
「嫌ーーーーーっ!!」
叫びに呼応したかのように、金銀の光が辺りに満ちた。
「露李、やめろ!それ以上力を使ったら死ぬ!」
水無月が近寄ろうとするも、露李の気が他者を阻む。
露李の叫びと、有明の高笑いが共鳴した。


