結たちの入った球が割れていく。
「まずい」
水無月が呟く。
「露李、あれ止めに行くよ!無理矢理ババアの力で風雅の術が破られたら、あいつら皆、獣化する!」
すうっと顔が青ざめるのが分かった。
さっき見た秀水のように、自らの手で彼らを殺すことになってしまうのか。
選択肢は一つだ。
「分かった!今、」
そう言葉を紡ごうとしたが、出来なかった。
何者かに着物の裾を掴まれている。
ただでさえ動きにくい着物だ、掴まれてしまえばすぐに動きが鈍くなる。
「な、に…」
「お嬢ちゃんっ、後ろだ!!」
刀を突きつけられていた星月夜が叫ぶ。
大きく動いた彼の首に一筋、赤い線が走った。
「星月夜さん、血がっ」
「んなこたぁどうでも良い!」
振り向くのが怖い。
「露李、離れて!」
水無月が地を一蹴り、露李を抱いて飛び退いた。
ついでに星月夜もだ。
「時間が経ちすぎたな。朱雀にも限界が来たか」
耳元でした水無月の声。
【ぐああ…】
ゆらりと迫るどす黒い赤。
その赤は、紛れもなく疾風のものだ。
考えたくない、考えたくなかった。
「露李、しっかりするんだ」
ちゃんと見ろ、と肩に手が置かれる。
グルグルという唸り声が胸を締めつける。
「露李!!」
厳しい水無月に、いやいやをするように首を振る。
【つゆ、り】
目を開けてしまった。
顔を覆う手をどけるなり、涙が溢れた。
「疾風。私が、分かる?」
ぼろぼろの涙声で問う。
返事はない。
確かに名前を呼ばれた気がしたのだ。
「嫌だよ疾風、何で、私に…!疾風を殺せって言うの!?」
「ああそうだ、殺せ。殺せば良い」
有明の楽しそうな声が鼓膜を揺らす。
「こやつだけではないがな」
悪夢のような、音が聞こえた。


