「雹…雷、鬼?」
手から感触が消え、ふわりと雹雷鬼が露李の前に浮かんでいた。
目を上げると、キラキラと銀色の気が漂って来る。
不思議と癒されるようで、心地好い。
「何だこれ…」
側に降り立った水無月が呆気にとられている。
「治してくれてるの…?」
痛みが引いていくのに気がつき、そう問う。
雹雷鬼から答えは返ってこない。
ただただ露李に気を送り続けている。
「雹雷鬼、ごめんね…」
今まで心のどこかで雹雷鬼を邪魔だと思う自分がいた。
雹雷鬼を支配しているのは自分だ、と思っている事だってあった。
それなのに、いつも守ってくれていた。
「ごめんっ…」
涙が頬を伝い、石を濃く染めた。
邪魔だと思ったこともある、だが。
雹雷鬼はどうしたって自分の一部としか思えなかったのは本当だ。
無くてはならない、大切な。
「ありがとう、雹雷鬼」
軽くなった身体をゆっくりと起こす。
雹雷鬼が、良いよ、とでも言うかのように銀色に光った。
立ち上がり、宵菊を従えている有明を見つめる。
そして、星月夜を。
「容赦はしません。もう私には迷いなんてありませんから。──本気で、殺しに行きます」
そう言って、美しく笑った。


