【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


痛い。

気持ち悪い。


まだ言葉を発することも出来ず、気持ち悪さが募る。


いくら空中戦だったといえど、もうすぐ地面に着くだろう。

しかし、露李にはいずれ来るであろうその衝撃を防ぐ術も無かった。

気にかかるのは、上空に佇む星月夜の顔。

先程とは全く違い、驚き、自分が刺されたような顔をしている。


「どうし…うっ」


やっと出た声は掠れていたが、それもすぐかき消された。

背中が地面についた。


自分が実戦に不馴れなことを痛みつきで分からされたようなものだ。


「どうだ露李姫、痛いか?」


有明が笑う。

そしてその笑い声に。


「露李…?」


水無月が反応した。

二人を相手にしながら有明の目線を辿る。

地面。

ねずみ色の石の上に体を丸めて横たわり、息を切らしている少女。

腹を押さえて─。

その上には茫然としている星月夜。

水無月の目がカッと見開かれ、彼を見据えた。


「星月夜、貴様───!!!」


「おいおい大丈夫かぁ?気ぃ抜いてっと死ぬぜ?」


睡蓮が立ち塞がるが。


「邪魔だ」


炎雷鬼を横に振る、横に振っただけに見えたが、違った。

刹那、睡蓮から鮮やかな赤が噴き出す。


腹部だけではなく肩、足などにも深い切り傷が走り、戦闘は不可能に思えた。

叫ぶこともままならず、声が吐息に変わっていた。

その姿に侮蔑の眼差しを送る。


「落ちろ」


水無月が冷たく呟き、睡蓮が纏っていた赤紫が一瞬にして消える。


「水無月。俺がいることを忘れたのか」


睡蓮を気で浮かせながら、秋雨が静かに口を開いた。


「そんなの鬼化してない秋雨くんじゃ相手にならないよ」


秋雨に、場に似つかわしくない笑顔を向ける。


「どうしてかは分からないけど。俺は行くよ」


「何っ…」


秋雨が二の句を継ぐ前に、鮮血が飛び散る。


「どうして本気を出さないの、秋雨くん。鬼の治癒能力も武器精製で出したものの前では意味ないのにさ」


分かってるんでしょ、と鼻で笑う。