「お前たち、油断するなよ」
「御意」
秋雨、星月夜、睡蓮が返事をし、構えた。
そこへ水無月と露李が斬りかかる。
星月夜は露李、秋雨と睡蓮は水無月だ。
「まだ君たち若作りババアに仕えてたんだ?見れば見るほど虚しいなぁ」
「やかましいぜー、水無月」
睡蓮が赤紫の気を水無月に飛ばすが、簡単に避けられる。
が、星月夜がそこへ待ち構えていた。
拳が視界の端に見えたが、それも間一髪で避ける。
「貴方の相手は私でしょ!?」
星月夜に刀を振りかざす。
「は、」
ジャキ、と星月夜の耳元で音がした。
自分の赤髪が切られるのを、少し他人事のように眺めて─我に返る。
「お嬢さん、やるねえ」
必死の思いで逃げた星月夜の額には、冷や汗が伝っていた。
ピンチになると、どうも余裕をかましてしまう自分の癖を自覚している。
だからこそ、危険だ。
星月夜の目の前に立つ風花姫は、揺るぎの無い目をしている。
絶対に勝つ、という意志が現れたように。
「お嬢さんなんて呼ばないで」
ひゅう、と口笛を吹かれた。
露李の眉がぴくりと上がる。
「威勢の良い姫様だな、昔の有明様みてえだ」
「心外だわ!」
露李がまた斬りかかる。
風をヒュンヒュンと切り、確実に距離を詰めてくる。
しかし、星月夜は気になる所があった。
攻撃を避けながら問う。
「なあ、何でっ、その気を飛ばして来ないんだ?お前さんならっ、操れるんだろ?」
力を自覚し、意のままに出来ているならば、その気を敵に向けることも出来るだろう。
露李は答えない。
何も言わず、すごい速さで斬りかかるだけだ。
「お嬢さんよお。まだ、誰かを傷つけないでいたい、とか思ってんのか?本気であいつらを助ける気あんのか?」
露李の目がはっと見開かれた。
一瞬、動きが止まる。
「オヒメサマ、戦いってのはこうやるんだぜ!」
これがチャンスだと言わんばかりに、星月夜は露李に拳を叩きつけた。
「っ、ごふっ」
腹部に直接入り、目がチカチカする。
そのまま地上へと落ちていくのを感じ、改めて空中戦だったのだな、とぼんやり考えた。


