ヒュンヒュンと風を切る音を両側から聞きながら、露李はぐっと拳を握り締めた。
この先で見るものは、もしかすると、これ以上無いほどに酷いものかもしれない。
それでも、自分は落ち着いていなくてはならない。
もし“彼等”が戦っているのなら、私は役目を果たさなければならない。
彼等だけに背負わせはしない。
守護される側だって、同じだ。
大きな音を立てないように、最大限の注意を払いながら跳ぶ。
「露李っ」
「はいっ」
「露李は何があってもっ、真の姿を見せちゃだめだよ!」
水無月の命に、反抗したい気持ちが湧き上がる。
だって、そんなの。
私は非力みたいじゃない。
「嫌!」
「え、嫌って…」
「その辺にしとけ水無月。露李は守られるのが大嫌いだそうだからな」
ニヤ、と笑った疾風の横顔を見たところで、足を止めた。
背筋に緊張が走る。


