「露李姫様。私です、澪子です」
さっき聞き覚えたばかりの声が露李を呼んだ。
ほうっと息を吐くと、すかさず疾風が無声音で叱咤する。
「馬鹿、おかしいだろ。あいつの気じゃない」
「え、疾風、澪子ちゃんのこと知ってるの」
「幼馴染みと言えるほど仲が良かった訳ではないが、長い付き合いではある」
「露李、油断禁物だよ。何から何までおかしい──ん?」
水無月が自分の右手を見つめる。
あれ俺、今、左手に断頭台持って右手に─。
「…うぁ」
「何だ水無月、って露李!?」
慌てて見回すと、縁側から露李が手招きしている。
「ねぇ二人とも、こっちから出て、皆の気を辿ろう」
けろっとした姿に溜め息を漏らす。
しかしそれもつかの間で、どちらも渋い表情をした。
「そっちって、石庭だろ。危険だ、どうせなら見つからないように行かないと」
「何言ってんの、屋根から行こうって言ってるの」
またけろっとして言う露李に水無月まで溜め息をつく。
「ほんっと、露李そういうとこ変わんないよね…よし。行くぞ、朱雀」
「お前っ、」
「鬼の身体能力を舐めるな。露李とて夏焼家の鬼、不足は無いだろう」
行くぞ、と外へ向かう。
二人に向かって再び溜め息をつき、疾風もそちらへ歩きだした。


