「誰が魔かなど決まっている、あの若作りババアだ」
ババアと聞いてすぐに有明のことだと分かった。
ただのババア呼びなら未琴、若作りなど余分なものが付いたものが有明だと、露李も随分理解出来るようになった。
いや、すごい失礼だな、と苦笑いする。
今では敵となったので、特に深い感情は抱かないが。
「そうだな、今は有明とか言う奴の襲撃に気をつけるべきだな」
疾風も賛同する。
どうして疾風にも若作りババアで通じるの、という疑問は心の中に仕舞っておく。
そう思ったとき、景真が顔をしかめて立ち上がった。
「どうしたんですか?」
さっきから時計をしきりに見ているなとは思っていたが、何かあったのだろうかと尋ねる。
「交代の時間、結構過ぎてるんだけど…ここまで遅いと不自然なんだよね」
「え?」
「兄上、次は理津たちだ」
弟の言葉にさらに顔をしかめる。
理津はともかく、秀水がいるのだ。
何も起こらない可能性の方が低いと言っても過言ではない。
「何か感じる?俺は…何も感じない」
疾風が首を横に振る。
「─とりあえず、俺が見に行く。疾風と水無月さんは姫様の傍に」
「分かった」
「言われずとも、俺は露李から離れない」
二人の言葉に安心したように頷き、景真は露李を見た。
「大丈夫だよ、姫様。何も心配することは無いから」
──確証がないことを、その場にいる誰もが理解していた。
望みを賭けるようにもう一度優しく笑い、景真は部屋を出て行った。


