「疾風、ここにいて寒くないの?」
ふと思いついて尋ねる。
疾風は寒がりだったはずだが。
「寒いが、ここを閉めておいて、あいつらが何か大事になっても怖いだろ」
「まあ、確かに」
何だかんだで面倒見が良い。
「水無月の正体が知られても困るし、あいつらがその辺爆破したら後片付けも面倒だし、言い訳も考えなきゃならない。面倒だ」
いや、その辺爆破したら、面倒じゃ済まないと思うけど。
何とも反応に困り、結局黙ることにした。
「それに、俺のせいで朱雀家は守護家の中での発言力が最低だ。元々は平等な筈なんだがな」
何のことか、すぐに分かった。
いかにもタイムリーな話ではないか。
下手に何か言えば、地雷を踏んでしまいそうだ。
それに、と露李は心の中で付け足した。
──疾風の口から聞きたいしね。
何も言わないのが最善だろう。
「なあ、露李。知ってるか」
「何?」
「霧氷の髪の色」
どきり、と胸が悪い方に鳴った。
「…知ってるよ」
「そうだな、お前は奴に会ってるんだもんな」
自嘲気味に笑う疾風に、胸が締めつけられる。
──そうか。
霧氷さん。
「同じなんだと。霧氷と」
「同じじゃないよ」
間髪入れずに放たれた否定に、え、と目を見開く。
露李の言っていることの意味が上手く掴めなかった。
二拍置いて、疾風が尋ねる。
「何が違うんだ」
「疾風は疾風なんだし同じじゃないって言ってるのよ。そりゃ髪はあれだけど、そんな卑下せずとも私は……何よ」
途中で途切れたのは、疾風が吹き出したからだ。
「そんな必死にならなくとも分かってる。お前が言ってくれるのは嬉しいが、今は髪の話をしている」
「知ってるわよ」
「話が先走り過ぎだ。兄上から何か聞いただろ」
バレてる!と思ったのが顔に出たのか、疾風はまた呆れたように笑った。
やはり無駄に口を開くものではない。
「お前は分かりやすいんだよ。馬鹿」
「おう」
「認めるのか、そこ。おうってお前仮にも姫様だろ、似合わないから止めとけ」
「柄じゃないから良いし」
「はいはい。ありがとな」
何よもうっ、と表面は怒りつつも。
─良かった。
ざわざわと木々が揺れる。
安堵が心に広がると共に──強い風が吹いたからだろうか。
何か、胸騒ぎがした。


