「お前、俺がブラコンでも良いのか。女好きで良いのか」
またいつもの仏頂面に戻ってしまい、全く愛想が無いわね、と失礼なことを考える。
「別にどうでも良いわよそんなの。ブラコンだろうがシスコンだろうが、えーっと。まあ、何コンだろうが」
「気を利かせたつもりか」
「うるさいなぁ」
こちとら反応に困るのよ、と露李も唇を尖らせた。
「コンプレックスシリーズは良いとして、女好きは将来困るんだぞ」
「何よ、将来って」
そう尋ねたとき、後ろで何やら盛り上がっている二人の声が聞こえた。
「へぇ、水無月さん露李ちゃんのお兄さんポジなの?大っ変だね!」
「そうだな、露李はいかんせん天然な所があるからな、だが、それも可愛いと思うのだ」
「あ、分かるー。手のかかる子ほど何か愛しいよねー。疾風も昔は─」
「貴様、同性愛者か?俺には分からないが」
「ん?弟としてだよ。恋愛対象はバッチリ女の子」
「ほう、そうか。どうでも良いが──いや、どうでも良くない」
そこまで楽しげだった水無月の表情が一気に険しくなり、小刀を取り出す。
さすがに炎雷鬼を出すことはないが。
「これ以上、敵が増えるのは困るからな。今のうちに貴様を消しておくのが筋というものだろう」
チャ、と軽い音をさせて小刀を構える。
「氷紀兄様!何してるの!」
慌てて水無月の腕を掴み、小刀を仕舞わせた。
必死な表情の露李に、水無月は状況におおよそ似つかわしくない心配そうな、少し厳しい顔をする。
「露李。刀構えてるときに正面から来ちゃダメだって言っただろ?斬っちゃったらどうするの。全く困った子だよ」
「ごめんなさい」
水無月のペースに流された露李はもはや戦力外。
「あっれれ、姫様何しに行ったんだろー今の?」
「さあな、あいつらはいつもあんなのだ」
呆れように疾風はそちらを見やり、ふあーと溜め息をつく。
全くもって興味が失せた様子の弟に、景真は楽しげに笑った。
日の光に二人の髪が照らされて、キラキラと光っている。
碧と赤という対照的な髪色の二人は、並んでいるとどこか眩しい。
「疾風、大きくなったねー。何ヵ月かで、もう一人立ちできそうなくらい大人びたよ。お兄ちゃん寂しいなぁ」
「そうか。兄上はいつまでもガキだな」
容赦ない毒舌にぶはっと吹き出す。
「やっぱ撤回!変わんないよ、お前。ほんっと素直じゃないんだからー」
語尾にハートマークでも付きそうな声色に顔をしかめ、疾風は無言で露李たちの方へ歩いていく。
「おいそろそろ露李を解放したらどうだ」
「何だ貴様、殺されたいのか?」
物騒な会話だねー、と景真も独りごちる。


