「こんにちは、姫様。改めまして、朱雀家当主の景真です」
「え、はい!」
視界に濃い赤が映った。
驚いたの半分、癖半分で威勢よく返事をすると、景真は人懐っこい笑みで露李に話しかけた。
「疾風に虐められてない?」
心配そうな景真と反対に疾風は仏頂面。
「失礼だな」
「だってお前すーぐ女の子泣かすじゃん」
「疾風そんな遊び人だったの!」
泣かせた女は星の数、といったところか。
今の疾風からは信じられないな、若気の至りかな、と少しずれた解釈をしてみる。
「そう、こいつムッツリスケベだし、来る者拒まず去る者追わずで─」
「あにいっ、変な誤解を招くだろうがっ」
景真の鳩尾に拳を入れてから咳払いで誤魔化そうとするが。
必死な疾風というのも珍しく、何より。
「弟キャラな疾風、イイよ!」
抑えようとするもニマニマと頬が弛んで仕方がない。
「でしょでしょ?今はこんなでも、小さいときはあにぃあにぃって、もう鬱陶しいくらいに─ぐはっ」
「兄上、針と糸を持って来てもらえるか」
「ゲホ、え、何で?」
「口を縫うからだ」
「お兄ちゃんそんな子に育てた覚えない!」
しくしく、と効果音つきの泣き真似を疲労する景真にも疾風は無頓着だ。
しかし少し焦ったように露李に向き直った。
「…露李。俺は女と付き合ったこともないし、想ったこともない」
「なーんだ」
「なぜそこでつまらなさそうな顔をする」
「いや、ブレないなってだけだけど」
「何だそれは…」
がっかり半分、安堵半分。
複雑だ。


