「静、様っ…」
襖を閉めた途端に、後ろからすすり泣く声が聞こえてくる。
恋い焦がれるような、苦しい声だ。
「いやー、すごい剣幕だったねぇ」
炎雷鬼を仕舞い、水無月は爽やかに露李に微笑む。
「ありがとう、助けに来てくれて」
「いつ出るか迷ったんだけどね。露李、強くなったね」
いつかのように、水無月の手が優しく頭に乗せられる。
「大声出さずにあの迫力、さすがだよ」
「それ褒めてるの?貶してるの?」
「褒めてる褒めてる」
本当かな、と胡散臭そうに見上げ、露李は少し俯いた。
「ムカついたのは本当だけど、キレちゃった」
姫様あるまじきキレ方。
「あれぐらいが雑魚には良いんだよ。ナメ過ぎあの子。…まあ、恋は盲目って言うしね」
「…気づいてたの?」
感心して尋ねると、水無月はまた爽やかに笑う。
「うん、露李じゃあるまいし、さすがにね」
「それは完全に貶してるよね…皆、分かってて来なかったのか」
しかしその予想は少し違っていたらしい。
「あー、あいつら行こうとしてたけど。俺が止めた。野暮だろ、当事者連れて行くとか」
水無月とて、未琴を殺したとき、露李の顔が浮かばないわけではなかった。
「まあ、俺が雑魚に抱ける最大限の情かな」
水無月の含み笑いを最後に、守護者たちの待つ部屋に着いた。


