***
何だか、やけに着替えることが多いな。
用意されていた着物を手際よく着る。
というのも、数分前のこと。
───
『えっ、皆来ちゃったの!』
指定された部屋の近くへ行くなり、葵と詩衣が声を上げた。
『駄目でした?』
静が尋ねると、彼女たちは首を横に振るが、
『姫様だけをお呼びしたつもりでしたの』
と困り顔。
『えーっ』
『結、はしたない』
むうっと唇を尖らせる結。
しかし詩衣とて皆が空腹であることは承知の上である。
『私に何かご用が?』
『姫様にお着替えをご用意させていただきました』
『それじゃあ少し時間がかかりますね。私は一人で大丈夫ですから、皆さんにお食事を今一度お願いしても?』
『分かりました』
───
というような経緯で、今着替えているのだが。
「あの、着物くらい自分で着付けられるのですが…」
手伝ってもらっているわけではないが、傍らに控えている少女が気になる。
何だか見覚えのある少女だ。
うーん、と苦笑いを浮かべる。
着替えを凝視されるのはあまり嬉しくない。
「…安全を考慮してのことでございます、風花姫様」
間を置いて彼女が答える。
その声でピンときた。
「あ、さっき静くんの傍にいた」
「澪子でございます」
淡々とした受け答えに戸惑う。
「澪子さん、見られてるとちょっと」
「そうですか。では、目を閉じます」
「あの…」
駄目だ、話聞かない人だこの人、と露李は無表情の裏で焦る。
「…質問をしても、よろしいでしょうか」
帯をキュッと締め、一段落。
その声に振り返る。
「何ですか?」
次は髪飾りだな。
そう思って鏡台に目をやり、思わずため息が出た。
見ただけで質が良いと分かる着物、美しい髪飾り。
これで一日過ごせるだろうか、汚してしまいそうだ。
「守護者の皆様のことを、どうお考えですか」
「大切な友達です」
「違います。彼らの死について、です」
言葉に詰まる。
「死ぬなんて、考えられません」
これだけでは、伝わらないかもしれない。
自分が死なせない、と決めていることまでは。
露李は澪子の言葉を待ったが、彼女はそうですか、と言ってそれきり何かを言うつもりは無いようだった。
何だか、やけに着替えることが多いな。
用意されていた着物を手際よく着る。
というのも、数分前のこと。
───
『えっ、皆来ちゃったの!』
指定された部屋の近くへ行くなり、葵と詩衣が声を上げた。
『駄目でした?』
静が尋ねると、彼女たちは首を横に振るが、
『姫様だけをお呼びしたつもりでしたの』
と困り顔。
『えーっ』
『結、はしたない』
むうっと唇を尖らせる結。
しかし詩衣とて皆が空腹であることは承知の上である。
『私に何かご用が?』
『姫様にお着替えをご用意させていただきました』
『それじゃあ少し時間がかかりますね。私は一人で大丈夫ですから、皆さんにお食事を今一度お願いしても?』
『分かりました』
───
というような経緯で、今着替えているのだが。
「あの、着物くらい自分で着付けられるのですが…」
手伝ってもらっているわけではないが、傍らに控えている少女が気になる。
何だか見覚えのある少女だ。
うーん、と苦笑いを浮かべる。
着替えを凝視されるのはあまり嬉しくない。
「…安全を考慮してのことでございます、風花姫様」
間を置いて彼女が答える。
その声でピンときた。
「あ、さっき静くんの傍にいた」
「澪子でございます」
淡々とした受け答えに戸惑う。
「澪子さん、見られてるとちょっと」
「そうですか。では、目を閉じます」
「あの…」
駄目だ、話聞かない人だこの人、と露李は無表情の裏で焦る。
「…質問をしても、よろしいでしょうか」
帯をキュッと締め、一段落。
その声に振り返る。
「何ですか?」
次は髪飾りだな。
そう思って鏡台に目をやり、思わずため息が出た。
見ただけで質が良いと分かる着物、美しい髪飾り。
これで一日過ごせるだろうか、汚してしまいそうだ。
「守護者の皆様のことを、どうお考えですか」
「大切な友達です」
「違います。彼らの死について、です」
言葉に詰まる。
「死ぬなんて、考えられません」
これだけでは、伝わらないかもしれない。
自分が死なせない、と決めていることまでは。
露李は澪子の言葉を待ったが、彼女はそうですか、と言ってそれきり何かを言うつもりは無いようだった。


