【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

***

何だか、やけに着替えることが多いな。


用意されていた着物を手際よく着る。


というのも、数分前のこと。


───


『えっ、皆来ちゃったの!』


指定された部屋の近くへ行くなり、葵と詩衣が声を上げた。


『駄目でした?』


静が尋ねると、彼女たちは首を横に振るが、


『姫様だけをお呼びしたつもりでしたの』


と困り顔。


『えーっ』


『結、はしたない』


むうっと唇を尖らせる結。

しかし詩衣とて皆が空腹であることは承知の上である。 

『私に何かご用が?』


『姫様にお着替えをご用意させていただきました』


『それじゃあ少し時間がかかりますね。私は一人で大丈夫ですから、皆さんにお食事を今一度お願いしても?』


『分かりました』


───


というような経緯で、今着替えているのだが。


「あの、着物くらい自分で着付けられるのですが…」


手伝ってもらっているわけではないが、傍らに控えている少女が気になる。

何だか見覚えのある少女だ。


うーん、と苦笑いを浮かべる。

着替えを凝視されるのはあまり嬉しくない。


「…安全を考慮してのことでございます、風花姫様」


間を置いて彼女が答える。

その声でピンときた。


「あ、さっき静くんの傍にいた」


「澪子でございます」


淡々とした受け答えに戸惑う。


「澪子さん、見られてるとちょっと」


「そうですか。では、目を閉じます」


「あの…」


駄目だ、話聞かない人だこの人、と露李は無表情の裏で焦る。


「…質問をしても、よろしいでしょうか」


帯をキュッと締め、一段落。

その声に振り返る。


「何ですか?」


次は髪飾りだな。

そう思って鏡台に目をやり、思わずため息が出た。

見ただけで質が良いと分かる着物、美しい髪飾り。


これで一日過ごせるだろうか、汚してしまいそうだ。


「守護者の皆様のことを、どうお考えですか」


「大切な友達です」


「違います。彼らの死について、です」


言葉に詰まる。


「死ぬなんて、考えられません」


これだけでは、伝わらないかもしれない。

自分が死なせない、と決めていることまでは。


露李は澪子の言葉を待ったが、彼女はそうですか、と言ってそれきり何かを言うつもりは無いようだった。