無言のまま時が過ぎる。
草のざわめき。どこかから湧く清水のせせらぎ。
そんなもの全てが心を洗うかのように耳に入ってくる。
「海松ちゃんと守護者の皆はずっと前から知り合いなんですか?」
「私と疾風様、静様、文月様、理津様は小さい頃から一緒に育ってきました」
あれ?と首を傾げる露李にまた言葉を紡ぐ。
「結様は二年前に戻られたのです。結様の実家である風雅家は厳しいお家ですので」
落ち葉が舞う。
朝の白んだ光にはらはらと散るそれも、また風流。
「あんなに馴染むなんて…」
「結様も私が九つの時までは同じようにこの村へいらっしゃったのですが、風雅家は十か十一になると修業へ出る決まりなのですよ」
ずいぶんと昔ながらの家だな、というのが率直な感想。
神影家もそんな風習があったとは聞いているが、もうすっかり廃れている。
その中でもまた馴染めたのは、風雅の性格が大いに影響しているだろう。
「ということで、露李さまは私たちが全力でお守り致しますので、安心してくださいね」
頼もしすぎるほどの言葉に強く頷く。
「私も頑張って皆を守れるようになります」
海松も少し目を丸くしてから微笑んだ。
「ありがとうございます。…お掃除はこの辺で終わりにしましょうか。露李さまは着替えてらして下さい、私は朝食の準備をして参りますので」
「分かりました、ありがとう」
失礼します、と海松が立ち去るのを見ながらも露李は自分の言動に驚いていた。
あんなに誰かを守りたいと思ったことは無かった。
でもなぜだか、ここに来て──六人と関わってから、心が温かい。
特に深く関わったわけではない。
だが、彼等の持つ温もりというものを確かに感じた気がした。
そのせいかもしれない。
必ず守ってみせる、そんな風に思った。


