「いや、」
守護者たちとは別に感じる、鋭い視線に気づかない振りをして、パッといつもの笑顔に戻る。
「ホントか。何か無理してんじゃねぇだろうな」
「大丈夫だよ理津ー。んな睨まないで、怖いから」
「んだと」
わざわざこちらに来て頭をグシャグシャされた。
「ちょ、理津何すんの!!」
「はっ、人を化け物みたいに言うからだ」
「残念だったわね、私の方が上の化け物ですので」
「洒落になれねぇからなそれ」
水無月が式神の振りをして何も言わないのを良いことに調子に乗りまくる。
不安だったのだ。
露李が出会った頃のような顔をしていたからだ。
「用意が出来ました。皆さんどうぞお召し上がり下さい」
詩衣が慌ただしく席につき、露李に目配せした。
「…いただきます」
「姫様に乾杯!」
結が叫び、各々が杯を挙げてから食事を始める。
しばらくしてから露李が詩衣に笑みを向けた。
煮付けを指差す。
「これ、詩衣さんがお作りになったんですか?」
「ええ!申し訳ありません、お口に合いませんでしたか?」
不安そうに露李を窺う。
「とんでもない。とても美味しいです」
「良かったですわ。姫様の好物など、教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。でもあの、姫様とか、止めて欲しいなって」
「でも…」
「お願いします」
「姫様がそう仰るなら…」
遠慮がちに微笑むのを見届けてから、秀水の方に向き直る。
「どうかしましたか、水鳥当主?」
「姫様。…未琴は元気にしていますか?」
一瞬、身体が固まった。
予想もしていた、聞かれて当然のことだ。
ぐっと拳を握り締める。
「皆さんに、お話しなければならないことがあります」
やけに静まりかえったことに戦くが、言わなければならないことだ。


